食品業界最前線

京都発、オーガニックミックスナッツが、東京でもブレイク!

黒七味や抹茶など、京都の伝統的な素材を使ったオーガニックのナッツとグラノーラの専門店「COCOLO KYOTO」が2021年2月、東京・GINZA SIXに直営店を出した。他にない味わいと素材に対する信頼で、連日売り切れが出るほどの人気だ。さらには2021年9月に京都にオープンしたヒルトンの最高級ブランド「ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts」の全客室に、同社の「祇園黒七味ナッツ」が採用されている。今の時代になぜ注目されているのか、その魅力の真髄にふれるべく代表の井上泰輔さんに話を伺った。

祇園黒七味ナッツがブレイク

祇園黒七味ナッツ 30g 700円、65g 1,290円

COCOLO KYOTOの名前を一躍有名にしたのは、創業300年以上の歴史をもつ京都の老舗、原了郭の黒七味を使ったミックスナッツだ。原了郭の黒七味といえば、一子相伝で守り伝えられている味で、高級料理店で利用されている逸品。黒七味ナッツを口に入れると、コクのある甘さのあとにピリリと唐辛子の刺激が追いかけて、ナッツの旨みととけあう。

独自の製法は、ローストしたミックスナッツ(カシューナッツ、アーモンド、ピーカンナッツ、クルミ)にグルテンフリーの有機醤油とブラウンシュガーを絡めて、黒七味をたっぷりとコーティング。手にとってもベタつかずカラッと仕上がっている、これが最も苦労した点であり、味の良さにもつながっている。

起業・商品開発のきっかけ

井上さんは20年以上、経営コンサルタントとしてベンチャー企業を中心に支援していた。ある時、自身の子どもが離乳食でアナフィラキシーショックを起こして救急搬送されてしまう。「食が安全だとは限らない」と気付いた瞬間だった。「子どもが安心して食べられる食品を自分で作りたい」という思いに駆られる。母が趣味で有機農業を手がけており、家庭の食卓に並ぶ野菜はほぼ自家製だったことから、アレルギーフリー、オーガニックの食品を作れないかとアンテナをはる。

その時に出会ったのが有機のグラノーラで、欧米では一般的だが日本ではまだそれほどでもなかった頃だった。ナッツ、オートミール、ドライフルーツをミックスして日本人が好む味にこだわってみたいと商品を開発、2014年5月に京都・三条烏丸の裏通りに店を開いた。

逆風の中で生み出した黒七味ナッツ

代表の井上泰輔さんと工場長の川﨑寿子さん

開店するとすぐに、京都初のグラノーラ専門店、しかもオーガニック素材という点に意識の高い層がとびついた。注目されて売上は伸びたが、半年足らずで下火になってしまう。次々にできたグラノーラ専門店もいつしか消えていた。勢いのあるブームは収束するのも早かった。

そんな時に、JR京都駅前にある、京都のシンボルともいえる京都タワーが50年ぶりに改装されることになり、出店依頼が来る。大きな賭けではあったが、インバウンドの増加が目に見えていたこともあり出店を決意。しかし、観光客相手にグラノーラはそれほど伸びなかった。

この時期に完成したのが祇園黒七味ナッツだ。グラノーラに使っていた美味しいナッツに味を付けてみようと思いたったのだ。現在の工場長でもある高校時代の同級生がヒントをくれて、黒七味ナッツが生まれる。ツテを頼って原了郭に完成品を送ったところ、社長夫妻がわざわざ来店されて、「食べた社員全員が美味しいと評価した」と告げられた。そこから公認で販売が始まり、じわじわとファンを増やしていった。

黒七味の他に、白味噌、抹茶、八ツ橋、珈琲、きな粉とフレーバーは次々に増えているが、そのポイントはオーガニックかつその土地の味。珈琲のフレーバーは京都の小川珈琲のもので、学生時代を京都で過ごした人にとっては、なつかしい味だ。片腕である工場長に対して、「彼女の味のセンスは抜群です。私がコンセプトと使う素材を決めると、想像していた味の120%のものを作り出してくれる」と井上さんは高く評価している。

コロナ禍の中、東京・銀座進出

銀座の人気商業施設GINZA SIXへポップアップ出店の準備をしていた2020年、コロナのためにイベントは延びてしまうが、テナントに入らないかと声がかかる。またしても大きな賭けだったが、打って出た。すると瞬く間に、連日完売の人気商品となる。企業の手土産、女性たちのまとめ買いなど、場所柄ともいえる顧客がリピーターになった。

現在は、京都・烏丸の本店、京都タワーサンド店、そしてGINZA SIXの3店舗を運営する。京都店はショップ、イートインスペース、オープンキッチンがある。キッチンでスタッフがナッツを焼き、イートインメニューにはアサイーボウルやスムージーを並べるなど、オーガニックをテーマにした商品展開は一本筋が通っており、多くの人に受け入れられている。

「COCOLO KYOTOはメーカーとして、よい商品を作る使命があります。そのための味づくりでありブランド展開です。私自身が好きでおすすめしたいもの、黒七味であったり、白味噌、抹茶などをより多くの人に知ってほしいし、食べてほしいから」と井上さんは言う。

「今後は、京都の素材の他に、東京や関東の素材を使ったミックスナッツを販売したい」との言葉だが、実は新作の発表を控えている。現在、商品構成の割合はグラノーラよりナッツの方が多くなっているが、これからもMade in Japanのオーガニック素材にこだわって商品展開をして、「次は世界へ」と夢は広がる。

取材:株式会社ウエストプラン

COCOLO KYOTO

住所:京都市中京区東洞院通三条下ル三文字町201 UEDAビル2F
TEL:075-229-6619
営業時間:11:00〜19:00(日曜・祝日~18:00)
イートイン利用は閉店の1時間前まで
定休日:火曜
http://www.cocolo-kyoto.jp/